『満月珈琲店の星詠み⑥~月と太陽の小夜曲~』

  • 2025年8月16日
  • 2025年8月19日
  • 小説
  • 1view

 今日もお疲れさまでした。

 あなたは日々、世の中不公平だなと感じていませんか?
 今日はそう感じて生きづらいなと思っている人に届いてほしい言葉を紹介します。

ジュピター

「世の中、不公平で溢れてしまうということは、あなたが、自分を蔑ろにしているからかもしれないわね」

「常に『どうせ自分なんて』と心の中で言っていたり、一生懸命頑張って結果を出せたとしても、『こんなのまだまだだ』と自分を認めなかったりしている」

「人はね、誰かに褒められても、自分を自分で褒めてあげないと、まったく満たされないものなのよ」

「本当に、言葉は大切よ。人を生かしも殺しもするわ。それは、内側の自分に対してもそう」

 望月麻衣(2024).『満月珈琲店の星詠み~月と太陽の小夜曲~』株式会社文藝春秋

 木星の遣い、ジュピターの言葉です。言葉は凶器になる、とよく言われますが、自分に対してもそうだというのが心に刺さりました。

<言葉についてのあらすじ>

 橋本静江は出版社に勤めている34歳の女性。出版社には12年勤めていたが、ヒット作には一度も恵まれていない。

 いま出版社では他編集者が担当している有名作家が復帰するということで沸き立っていた。
 作家と同様に編集者だって、活躍している編集者を見ると羨ましいし、悔しいと思う。

 ヒット作を一度も出していない自分がふがいなくてならなかった。

 後輩には大富豪の娘もいた。彼女のことは努力してるのは認めているのだが、心のどこかでは「やっぱり恵まれてるよな」と思ってしまう。

 自分も努力はした。出版社は5社受けて、なんとか運よく今の出版社だけに内定をもらえた。憧れだった出版社に自分はやっとの思いで入社できた。

 でも彼女はそんな苦労はしていないのだろう。巨大グループの娘を、会社は落とすわけがない。

 静江は母と妹との3人暮らしで妹は静江とは10歳離れている。約10年間一人っ子であり、わがままにさせては駄目だという両親の気負いがあったのか、静江は厳しく育てられた。
 その一方で、長く二人目に恵まれず、諦めかけていた頃に授かった第2子である妹は、お姫様のように両親に甘やかされていた。

 いま妹は働いていない。ずっと家にいるのだが、家事は一切やらない。就職活動もしっかりしているのかもよく分からない。
 だがそれでも母は何も言わない。母も死んだ父も、妹には甘かった。

 世の中はなんて理不尽なんだろう。生まれた家が恵まれている人もいれば、同じ家に生まれても妹のように甘やかされる人もいるのだから、世の中は本当に不公平だ。

 「いいな」「羨ましい」と思ううちはまだマシだ。そのうちに「ずるい」「なんであの人ばかり・・・」と黒い感情に変わっていってしまう。

 そんな時、公園の野外ステージで歌っていたある女性(木星の遣いジュピター)と出会う。ジュピターは自分の歌を聴いていた静江に声をかける。

 そして世の中不公平だと悩む静江にジュピターは言った。
 「あなたは自分を蔑ろにしている。自分で自分を認めて、褒めてあげないと」

 静江は決して成果を出せていなかったわけではなかった。懸命に頑張って結果を出して、上司に褒められたことはあった。しかし自分で自分を褒める気にはなれなかった。「この程度じゃ駄目だ」と。

 静江自身が自分の頑張りを認めていなかったのだ。「ここでは終わりたくない」「こんなのでは満足したくない」という気持ちは確かにあった。でもそれがずっと自分を苦しめていた。

 自分はずっと『誰かに褒められたい』と思っていたはずだった。

 しかし本当は『誰か』ではなく、自らを褒められる、誇らしい自分でありたかったのだ。

 内側にいる本能の自分が認めてほしい、褒めてほしいと声を上げていても、理性を司る表側の自分が「まだまだ出来るだろう?甘えるな」と押さえつける。

 静江はまるでセルフDVのようなことをしていたということに気づく。自らに対する謝罪の言葉が腹の奥底から湧き出てくるのを感じると同時に、頬には涙が伝っていた・・・。

<まとめ>

 自分に厳しくするのは決して悪いことではないと思います。今の自分に満足せずに努力し続けることで、さらなる成長につながるでしょう。

 しかしその厳しさが行き過ぎると自分を苦しめる足かせになってしまいます。

 何か物事を達成したときに、そこで満足して完全に立ち止まるのは良くないかもしれません。

 でも達成したその事実とそこに至るまでに自分がしてきた努力はしっかりと自分で認めて、褒めてあげるようにしましょう。

 そのためにも自分は自分である、という気持ちも大切にしましょう。

 他者と比べると、どうしても「あの人はもっと出来ている、あの人はもっと結果をだしているのだから自分はまだまだ」と自分を褒めることをしなくなってしまうと思います。

 また、ある心理学者によると、良くないことに見舞われてもモチベーションを落とさずに成果を上げるタイプの人が存在するとのこと。そしてその彼らの共通点は自分を褒める能力が高いということらしいです。
 自らの望む成果を得るためにも、自分を褒めることは重要だということが分かります。

 日常の中で些細なことでも自分を褒める、それだけでも自分の心は満たされます

 ちゃんと朝起きてえらい、仕事をしてえらい、体に悪いお菓子を我慢できてえらい、しっかり休憩して自分を大切にできてえらい・・・小さいことでも良いから自分を褒める。
 そして自分を褒められるような、その小さな達成の繰り返しを楽しんで生きていきましょう。

最新情報をチェックしよう!