今日もお疲れさまです。
あなたは人のためになりたい、誰かの支えになりたいと考えたりしますか?
でも具体的にどうすればいいのか、今日はそのヒントになる言葉です。
「彼女を想っている私の存在が、彼女の存在のあかしになるんじゃないかなって」
青山美智子(2022).『月の立つ林で』株式会社ポプラ社
『月の立つ林で』の第一章 誰かの朔 の主人公である怜花の隣に住む樋口さんの言葉。
相手への想いを示すことで相手の存在を肯定するという意味で、人のためになることの本質をつく言葉だと思います。
<言葉についてのあらすじ>
朔ヶ崎怜花(さくがさきれいか)は41歳の女性。
彼女は悩んでいた。
小さい頃から人の役に立ちたい、お世話をしたいと思ってきたが、それはどういうことか?
怜花は現在、長く務めた看護師の仕事を続けられなくなり、やめたばかりだった。
体力的にも、人間関係でもしんどくなってはいたが、退職を決意した決定的な出来事があった——。
あるとき、怜花の直属の部下である杉浦という看護師が、新人の指導をすることになった。
しかし杉浦は責任感が強く、主張するタイプでなかったため、怜花は新人ばかり気にかけ、杉浦が苦しんでいるのに何も気づけなかった。
怜花の同僚によると、杉浦は陰で相当努力していたらしいが、怜花は何も気づかなかった。
同僚から杉浦のことを聞いた怜花は自分は何も役に立っていなかったと、自信を喪失し、看護師をやめたのだった。
怜花は隣家の樋口から猫を預かっており、その間、樋口は友人を励ましていたことを知る。
樋口の友人は50代にして恋人も仕事も失い、どん底だったが、一緒に過ごして励ましたという。
樋口は言う。
悩んでいるとき、人は自分を見失うもの。
私がいるってことは私が想うあなたがいるってことになると思う。
問題を直接解決できなくても、近くにいてあげることそれだけで、相手の存在を肯定することになると思う。
「私は新しい恋人を紹介することも、仕事を見つけてあげることもできないけれど、私がいるよってことだけ、その人に知ってほしかったの」
それを聞いて怜花は思う。
特別なことを考えてあれこれしなくても、その想いだけで人のためになれるのかもしれない。
<まとめ>
人の役に立つって何でしょうか?
相手に何かをしてあげること?相手に何かを与えること?
どちらも場合によっては役に立つことになるでしょう。
しかし相手が望まないことまでしてあげるのは間違っているかもしれません。
ただ一方で、子育てや介護では相手が望んでいても、全てをやってあげるのは間違いだと言われます。
では人の役に立つということの本質は何なのでしょうか?
それこそが、この物語で出てきたその人の存在を肯定することだと思います。
相手が必要としている部分だけ助けて、相手が自分でできることは手を出さない。
そして相手が頑張ったこと、頑張っていることにしっかり気づいて認めてあげる。
言葉や行動で助けるのが難しければ、ただそばにいてあげる。
そうやって相手に関心を持って、私はあなたを想っています、あなたのことを考えていますというのを相手に示すのです。
怜花も杉浦の頑張りに気づいて、それを認めてあげることができれば、自信を失うことはなかったかもしれません。
あなたも大切な人が困っていたら、助けになりたいというその想いを届けてあげてください。
『月の立つ林で』は人とのつながりがテーマの連作短編集です。
自分は助けられているだけじゃなく、自分も知らないうちに、顔の知らない誰かを助けている。
そう思わせてくれる、生きる元気がもらえる物語です。
作中では月に関する解説が登場し、月の特性を人間関係にも上手く落とし込んで物語が描かれています。
天体としての月が好きな人にもオススメです。ぜひ読んでみてください。