今日もお疲れさまです。
事故や災害で大切な人が亡くなった・・・。
そしてもしかしたら死ぬのは自分かもしれなかったという経験を時にすることがあります。
そんなとき、考え方次第でその後の人生は大きく分かれます。
「こればっかりは運命だからな。気に病んでも、しょうがねえぞ。誰のせいでもねえんだ」
天童荒太(2019).『ムーンナイト・ダイバー』株式会社文藝春秋
震災後、海に潜り遺留品の回収を行う主人公、瀬奈舟作(せなしゅうさく)。
生き残った自分を責めないようにと友人が彼に掛けた言葉です。
<言葉についてのあらすじ>
瀬奈舟作は地震の被災地付近の海に潜り、遺留品の回収をしているダイバー。
元々は漁師をしていた。
震災のあった日、舟作は腰を痛めており、高台にある自宅で休んでいた。
その日は両親と船の修繕作業をする予定であったが、腰痛のため動けず、代わりに夜勤明けで手の空いていた兄が作業を変わってくれていた。
しかし津波により、浜辺で作業をしていた両親と兄は亡くなってしまった。
あの日、死ぬのは兄ではなく本当は自分だったと思う舟作に友人は言う。
「ほんの偶然で死の運命が変わったという話はあちこちで聞く。でもこれは誰のせいでもない」
自分を責めたり、気を落としたりしないようにと、友人は舟作に伝えたのだった。
<まとめ>
事故や災害の際、ほんの偶然で、死ぬのは自分だったということは起こりえます。
そういうとき、大切な人を失う悲しみだけでなく、なぜ自分が生きてしまったのかという罪悪感にも襲われます。
自分を責めたまま、幸せになることを自ら遠ざけて、その後の人生を生きる人もいます。
『ムーンナイト・ダイバー』の著者、天童先生はこう述べています。
「生きている人は幸せになっていいし、幸せになることが失われた命への誠実な祈りになる」
あなたがなぜ自分が生きたのかと恨み、自分を責めて不幸になるのは犠牲になった人も望んでいません。
生き残ったことに感謝し、亡くなった人の分まで自分が幸せになり、そして周りも幸せにする。
そんな生き方ができるといいですね。
『ムーンナイト・ダイバー』は震災から4年、秘密裏に現場付近の海に潜り、遺留品の回収作業をするダイバーの物語です。
喧嘩したまま夫と永遠に会えなくなった人、ほんの偶然で運命が変わり、死ぬのは自分かもしれなかった人、そして当たり前の日常を奪われた多くの人々。
そんな震災に巻き込まれた人々の喪失感や罪悪感、葛藤、苦悩といった様々な想いがこの本に詰まっています。
被災された人々の想いを少しでも知ることができる本です。
参考
天童荒太(2019).『ムーンナイト・ダイバー』株式会社文藝春秋